INTRODUCTION
1976年ペントハウス誌の社長、ボブ・グッチョーネが同時期の『スター・ウォーズ』約2倍の製作費46億円の巨費を投じて完成させた歴史大作映画『カリギュラ』。
歴史上実在したローマ帝国皇帝カリギュラの放蕩・残忍そして没落を描いた作品でありながらも、その過激な性描写からハードコアポルノと批判を浴び、映画史の汚点とまで評されたが、公開されるやその過激さが話題を呼び日本を含む全世界で大ヒットを記録し、日本では「カリギュラ効果」として話題と旋風を呼んだ。
カリギュラ役には『時計じかけのオレンジ』で世界中に強烈な印象を残したマルコム・マクダウェルが演じ、最近も数々のハリウッド大作に出演し『クィーン』でアカデミー主演女優賞を受賞したヘレン・ミレン、『アラビアのロレンス』ほかアカデミー賞に 8 回ものノミネートを果たしたピーター・オトゥール、『ミスター・アーサー』のジョン・ギールグッドなど名だたる英国大物俳優が出演している。
だが、本来のテーマであったはずの「絶対的な権力は、絶対的に腐敗する」という政治的風刺は伝わらずに完成し、多くのスタッフが参加の名前を封印し製作者たちの気持ちが晴れることがなかった。それから約45年の歳月を経て、失ったと考えられていた本編全素材の現存が明らかにされた時、改めて当時の制作者たちによる本当に描きたかった真のカリギュラ『カリギュラ 究極版』がこの21 世紀に蘇った。奇しくも世界がまさに絶対的な権力に対する不安を持ったこの時代に…。
豪華絢爛歴史スペクタクル巨編であり世紀の大問題作がこの世に蘇るのは偶然か?必然か??
二度と観られない圧倒的な本作の究極版をその目で確かめろ!!
STORY
紀元一世紀前半、ローマ帝国の王室は第二代ローマ皇帝・暴君ティベリウス(ピーター・オトゥール)の下で堕落しきっていた。初代皇帝の曾孫であるカリギュラ(マルコム・マクダウェル)は、祖父であるティベリウスの異常性癖に辟易しながらもその王座を虎視眈々と狙っていた。やがてカリギュラは親衛隊長マクロと共に暗殺を企て、ローマ皇帝の座を強奪することに成功。第三代ローマ皇帝となったカリギュラは、世継ぎのためにカエソニア(ヘレン・ミレン)という淫乱女を妻に迎え、本格的な統治を開始するが、内なる欲望を抑えきれず徐々に暴君の片鱗を見せ始める――。
CAST

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マルコム・マクダウェル
1943年イギリス、ウェストヨークシャー州生まれ。『If もしも‥‥』(1968年)でデビュー。『オー!ラッキーマン』(1973年)『ブリタニア・ホスピタル』(1982年)で同役を再演。その後スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』(1971年)の主役アレックスを演じる。『Suing the Devil』(2011年)や『エグザム:ファイナルアンサー』(2013年)で主演を務め、『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』(2024年)や『The Partisan』(2024年)などでも出演し近年でも活躍している。
カリギュラ
第三代ローマ帝国皇帝。先代皇帝・暴君ティベリウスの孫にして、稀代の独裁者として悪名高い。皇帝就任後、民衆からの支持は高かったものの側近や元老院を軽視した政策を実行し、豪華絢爛な日々を過ごす。

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ヘレン・ミレン
1945年イングランド・ロンドン生まれ。1966年に舞台でデビューして以来多忙を極め、1967年、『Herostratus』でスクリーンデビュー。『オー!ラッキーマン』ではマクダウェルと共演、『長く熱い週末』(1980年)『エクスカリバー』(1981年)『ヒッチコック』(2012年)、『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年)、『ロング,ロングバケーション』(2017年)など数多くの映画作品に出演。2003年には演劇界への貢献が認められデイムを叙勲。映画でも2007年に『クィーン』でアカデミー主演女優賞を受賞。直近では『バービー』(2023年)にてナレーターとして出演し、Netflix配信の『木曜殺人クラブ』にて主演として出演を果たす。
カエソニア
カリギュラの妻。カリギュラの即位後、妹の提案で正妻を決める祭壇におり妻として選ばれた。浮気癖があるという噂が立つほどの淫乱妻。

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ピーター・オトゥール
1932年アイルランド生まれ。名門の王立演劇アカデミーで演技を学び、1950年代半ばからジョン・オズボーンの戯曲『Look Back In Anger』や『Pygmalion』などの主要な舞台作品で主役を演じる。1960年に『海賊船』で映画デビュー。その後『アラビアのロレンス』(1962年)の主役を演じ瞬く間に世界的映画スターの一人となり、『おしゃれ泥棒』(1966年)『将軍たちの夜』(1967年)『冬のライオン』(1968年)『マーフィの戦い』(1971年)、『スタントマン』(1980年)、『プランケット城への招待状』(1988年) などの映画で圧倒的な存在感を維持する。アカデミー賞の最優秀男優賞に8回もノミネートされ、2002年に名誉アカデミー賞を受賞。2013年に胃がんで亡くなった。
ティベリウス
第二代ローマ帝国皇帝。異常性癖の持ち主で、色欲に溺れる日々を過ごしているため重度の性病を患っている。
ジョン・ギールグッド
1904年イギリス、ロンドン生まれ。10代より王立演劇学校で学び、1921年から舞台デビュー。1953年にナイトに叙勲。『ベケット』(1964年)でアカデミー助演男優賞ノミネート、『ミスター・アーサー』(1981年)で同賞を受賞。他に『80日間世界一周』(1956年)『オリエント急行殺人事件』(1974年)『エレファント・マン』(1980年)『炎のランナー』(1981年)『ガンジー』(1982年)『プロスペローの本』(1991年)『シャイン』(1996年)『エリザベス』(1998年)など。00年に96歳で老衰で亡くなった。
ネルバ
ティベリウスの良き理解者。唯一、ティベリウスに進言できるほどに信頼されているが善人すぎるが故にティベリウスの悪政を嘆いている。
テレサ・アン・サヴォイ
1955年イギリス、ロンドン生まれ。1970年代初頭、『Le farò da padre』(1974年)で映画デビューし、その後1976年にカンヌ国際映画祭で上映された『Vizi privati, pubbliche virtù』(英題:Private Vices, Public Pleasures)(1976年)に出演。ティント・ブラス監督は彼女に『サロン・キティ』(1976年)でスパイ兼娼婦役をオファーし、マリア・シュナイダー が『カリギュラ』を降板した際には、彼女に代役を依頼した。その後『蒼い本能』(1989年)などテレビや映画など出演し、1989年に引退するが『La fabbrica del vapore』(2000年)でカムバック。2017年に癌で亡くなっている。
ドルシラ
カリギュラが溺愛する最愛の妹。実の兄と身体を重ねるほど愛し合っている。
STAFF
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撮影監督:
ティント・ブラス
1933年生まれのティント・ブラスは、1960年代のイタリア映画界を揺るがした監督の一人。彼の最初の長編映画『In Capo al Mondo』(1963年)は、ヴェネツィア国際映画祭で上映され、大きな話題を呼んだ。彼は『ミランダ 悪魔の香り 』(1985年)や『パプリカ 』(1991年)など、このジャンルの象徴的な古典作品をいくつか監督した。2010年代以降、何度かカメラの前に登場しているものの、ティント・ブラスは2009年のエロティックな短編『Hotel Courbet』以降、監督作品を作っていない。
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脚本:
ゴア・ヴィダル
小説家でエッセイストのゴア・ヴィダルは、1948年に同性愛者の主人公を描いた3作目の小説『都市と柱』でアメリカ文学界を揺るがした。彼の作品のほとんどはアメリカ社会を扱ったものだが、大背教者、ローマ皇帝ユリアヌスを描いた『ジュリアン』(1964年)など歴史小説も書いている。彼のオリジナル脚本はウィリアム・ハワードによって小説『ゴア・ヴィダルのカリギュラ』として脚色された。
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プロデューサー:
ボブ・グッチョーネ
画家とデザイナーの訓練を受けたボブ・グッチョーネは、エロティック雑誌「ペントハウス」を創刊して名声を博した。1965年にイギリスで創刊され、その後1969年にアメリカで出版されたこの雑誌に登場するモデルたちの写真を撮影していたのが彼だった。本作ではプロデューサーとして、多くの製作費を出資。
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究極版プロデューサー:
ネゴヴァン
1971年アメリカ、イリノイ州生まれ。1995年に自身のロックバンド「スリー・イヤーズ・ゴースト」を結成し、2011年にほぼ1世紀ぶりとなる旧式の技術で録音したシングルをリリースした。アートにも精通するネゴヴァンは、1999年に象徴主義やドイツ表現主義を専門とするプライベート・アートギャラリー「センチュリー・ギルド」を設立。さらに、作家、編集者としての側面も持ち合わせており、2016年には20年間の研究と3年間の執筆を経て、『Le Pater: Alphonse Mucha's Symbolist Masterpiece and the Lineage of Mysticism(邦題:ミュシャの象徴主義的傑作と神秘主義の系譜)』を出版し、ロジャー・ディーンやアレックス・グレイをはじめとする多くのアーティストから賞賛された。