ラース・フォン・トリアー レトロスペクティブ2023

過激すぎるイノセンス 極限に至る悲劇と喜劇
過激すぎるイノセンス 極限に至る悲劇と喜劇
INTRODUCTION
過激すぎるイノセンス 極限に至る悲劇と喜劇
既存の壁を突き破り、限界を突破する探究心と情熱、今だからこそ見える軌跡がここにあるー。最新作『キングダム エクソダス<脱出>』劇場公開を記念して、日本劇場初公開作や未公開バージョンなど含む、至極の14作品を一挙上映。
デンマークが生んだ最も野心的で、独自の映像言語を持つ映画監督ラース・フォン・トリアー。批評精神に溢れたテーマ、ベルイマンやドライヤーなど映画史に名を残す監督たちの作品や、文学からのリファレンス、ホラー、メロドラマ、ポルノといったジャンル映画の新構築、実験的な撮影手法、知性と俗物性を絶妙なバランスで配合した挑発的な作風は、毎作ごとに少なからずセンセーションを巻き起こす。その過激な表現を受け付けない人がいる一方で、熱狂的な支持者も多い。クエンティン・タランティーノが『ドッグヴィル』を“最高の脚本”として挙げれば、ポール・トーマス・アンダーソンは「フォン・トリアーの鞄持ちなら喜んでする」と言い、マーティン・スコセッシは『奇跡の海』を90年代の映画ベスト10に挙げ、ジョニー・デップは「監督にオファーを待っていると伝えてくれ」とデンマークの雑誌インタビューで語るほどだ。近年は、自らの「鬱」体験や、カンヌ映画祭での失言による追放、パーキンソン病の公表など、荒波にもさらされてきたが、それでもなおコンスタントに新たな試みに挑んだ作品を撮り続けている。 今回、彼の国際的な名声を広める契機となったドラマシリーズ「キングダム」の完結編が、世界に先駆けて日本で劇場公開されることを記念し、長編デビューから最新作『キングダム エクソダス〈脱出〉』に至るまでの39年間の軌跡を網羅した、14作品に及ぶ待望の大回顧上映が行われる。このうち『エレメント・オブ・クライム』(1984)、『エピデミック~伝染病』(1987)、『ヨーロッパ』(1991)、『奇跡の海』(1996)、『イディオッツ』(1998)、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)、『ドッグヴィル』(2003)が4Kデジタル修復版として新たにスクリーンに蘇るほか、これまで日本では映画祭等でしか上映されなかった『ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦』(2003/ヨルゲン・レスと共同監督)、「オートマヴィジョン」というコンピューター制御による撮影を試みたコメディ『ボス・オブ・イット・オール』(2006)も上映される。また『ニンフォマニアック』(2013)はその過激さゆえに日本公開当時はカットされた、「Vol. 1」と「Vol.2」合わせて計84分にも及ぶ未公開シーンが追加となったディレクターズ・カット完全版が日本初公開となる。
過激すぎるイノセンス 極限に至る悲劇と喜劇
LARS VON TRIER
輝かしい受賞歴を誇る一方で、観る者を挑発するような作風で常に物議を醸してきたデンマーク出身の監督。1995年に同郷のトマス・ヴィンターベアらとともに、様々な制約の中で映画を製作する「純潔の誓い」と呼ばれる映画運動“ドグマ95”を発表すると、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ではカンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)を受賞。その後も新作を発表する度に大きな話題を呼んでいる。2022年、パーキンソン病を患っていることを公表するなど健康面が心配されていたが、最新作『キングダム エクソダス〈脱出〉』がヴェネチア国際映画祭でプレミア上映された際には、オンラインでインタビューに応え、これからも映画製作を続けることを宣言し、元気な姿を観客に見せた。
FILMS
エレメント・オブ・クライム
【4Kデジタル修復版】
第37回カンヌ国際映画祭
フランス映画高等技術委員会グランプリ受賞
腐敗と倦怠に包まれた世紀末のヨーロッパを舞台に、殺人鬼と同一化していく男を描く伝説のデビュー作
フィッシャー刑事の捜査哲学は、犯罪者の視点に立って事件を捉え、解決に導くというものだった。しかし、あまりにも犯罪者の心理を分析する能力に優れていたため、犯罪の渦中に引きずり込まれてしまい…。
キャスト:マイケル・エルフィック、メ・メ・レイ/英題: ELEMENT OF CRIME/1984年/103分/デンマーク/英語
R-15 相当 15才未満の方はご観賞いただけません
エピデミック~伝染病
【4Kデジタル修復版】
第40回カンヌ国際映画祭
ある視点部門出品
フォン・トリアー自身も映画監督役で出演する、現実と虚構の境界を白昼夢的に綴った幻想譚
ある映画監督と脚本家が、「エピデミック」という新作映画のストーリーの完成に四苦八苦していた。そしてそのうち映画の題材としていた恐ろしい伝染病が彼らの現実世界をも浸食し始めて…。
キャスト:ラース・フォン・トリアー、ニルス・ヴァセル、ウド・キア/原題: EPIDEMIC/1987年/106分/デンマーク/デンマーク語ほか
ヨーロッパ
【4Kデジタル修復版】
第44回カンヌ国際映画祭
審査員賞、芸術貢献賞ほか受賞
迷宮のような映像美が混迷する敗戦後のドイツへと誘う、戦争の傷跡を厳しい視線で描いた異色作
1945年、第二次世界大戦敗戦直後のドイツ。ドイツ系アメリカ人のレオ・ケスラーは叔父に紹介されて鉄道会社ゼントローバに就職する。ケスラーは中立的な立場からドイツの復興を手伝おうとしていたが…。
キャスト:ジャン=マルク・バール、エディ・コンスタンティーヌ、ウド・キア/原題: EUROPA/1991年/107分/デンマークほか/英語ほか
※PG-12 相当 12才未満の方は保護者の助言が必要です
奇跡の海
【4Kデジタル修復版】
第49回カンヌ国際映画祭
審査員特別グランプリ受賞
米・アカデミー賞 主演女優賞ノミネートなど、国際的な名声を一気に高めた初期の代表作
1970年代初頭、プロテスタント信仰の厚い無垢な女性ベスは、油田で働くよそ者のヤンと結婚する。遠く離れた油田へ仕事に行ったヤンの帰りが待ちきれず、彼が早く戻ることを神に願うが、その願いは思わぬかたちで叶えられる…。
キャスト:エミリー・ワトソン、ステラン・スカルスガルド、ウド・キア/原題: BREAKING THE WAVES/1996年/158分/デンマークほか/英語
R-15 相当 15才未満の方はご観賞いただけません
イディオッツ
【4Kデジタル修復版】
第51回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門出品
“ドグマ95”のルールに沿って制作され、デンマーク映画界への国際的な関心を高めた問題作
自ら知的障がい者のふりをして、人々の偽善を暴こうとする活動グループ、“イディオッツ”。彼らに偶然出会ったカレンは、それが演技だと分かり最初は怒りを露わにするが、次第に彼らに惹かれ、行動を共にするようになる。
キャスト:ボディル・ヨルゲンセン、イェンス・アルビヌス/英題: THE IDIOTS/1998年/114分/デンマークほか/デンマーク語
R-18+ 相当 18才未満の方はご観賞いただけません
ダンサー・イン・ザ・ダーク
【4Kデジタル修復版】
第53回カンヌ国際映画祭
パルム・ドール&女優賞W受賞
世界中の観客を感動と熱狂の渦に巻き込んだ、エモーショナルな衝撃作にして、不朽の名作
息子ジーンと2人暮らしのセルマは、つつましい暮らしだが、隣人たちの友情に包まれ幸せな日々を送っていた。しかし、セルマは遺伝性の病で視力を失いつつあり、手術を受けない限りジーンも同じ運命をたどることになる…。
キャスト:ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・モース/原題: DANCER IN THE DARK/2000年/140分/デンマークほか/英語ほか
※PG-12 相当 12才未満の方は保護者の助言が必要です
ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦
【HDリマスター版】
フォン・トリアーの捻くれた映画愛が垣間見える、ユーモアに満ちた傑作ドキュメンタリー・コメディ
フォン・トリアーは敬愛するデンマークの大監督ヨルゲン・レスに、彼が製作した短編映画「The Perfect Human」のセルフリメイクを5本撮ることを依頼する。それぞれをどんな作品にするか全決定権を持つトリアーは、無理難題をレスに課すが…。
キャスト:ヨルゲン・レス、ラース・フォン・トリアー/英題: THE FIVE OBSTRUCTIONS/2003年/90分/デンマークほか/デンマーク語ほか
ドッグヴィル
【4Kデジタル修復版】
第56回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門出品
床に白線を引いただけのセットで全編撮影された、緊張感あふれる未だかつてない映像体験
大恐慌時代の廃れた鉱山町ドッグヴィル。偉大な作家となることを夢見ていたトムは、ギャングに追われたグレースを奉仕と引き換えにかくまうことを町の人々に提案する。しかし、住人の態度は次第に身勝手なエゴへと変貌してゆき…。
キャスト:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール、ジェームズ・カーン、パトリシア・クラークソン/原題: DOGVILLE/2003年/177分/デンマークほか/英語
R-15 相当 15才未満の方はご観賞いただけません
マンダレイ
【HDリマスター版】
第58回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門出品
人間のエゴ、そして愛を見るに耐えない生々しさで暴く、『ドッグヴィル』の舞台形式を進化させた新たな寓話
ドッグヴィルを後にしたグレースは、父親とともにアメリカ深南部の大農園マンダレイを訪れるが、そこには廃止されたはずの奴隷制度が残っていた。グレースは奴隷たちを解放しなくてはならないという使命感に駆られて行動に出るのだが…。
キャスト:ブライス・ダラス・ハワード、イザック・ド・バンコレ、ダニー・グローヴァー、ウィレム・デフォー/原題: MANDERLAY/2005年/138分/デンマークほか/英語
R-18+ 相当 18才未満の方はご観賞いただけません
ボス・オブ・イット・オール
【HDリマスター版】
コンピューターがランダムにカメラをコントロールする「オートマヴィジョン」を用いた初の本格コメディ
IT企業経営者のラウンは、架空の社長“ボス・オブ・イット・オール”を仕立て上げ、嫌われ役を押し付けて従業員たちに取り入っていた。そんな時、社長と直接交渉することを望む買収希望者が現れ、落ち目の役者にその役を演じさせるが…。
キャスト:イェンス・アルビヌシュ、ピーター・ガンツェラー/英題: THE BOSS OF IT ALL/2006年/99分/デンマークほか/デンマーク語ほか
アンチクライスト
 
第62回カンヌ国際映画祭
女優賞受賞
カンヌ国際映画祭で失神者続出!過激な性描写と暴力描写が物議を醸した衝撃作
セックスの最中に幼い息子を事故で亡くした夫婦。愛する息子の死をきっかけに心を病んでしまった妻を療養させるため、セラピストの夫は彼女を森の山小屋へと連れて行くが…。
キャスト:シャルロット・ゲンズブール、ウィレム・デフォー/原題: ANTICHRIST/2009年/108分/デンマークほか/英語
R-18+ 相当 18才未満の方はご観賞いただけません
メランコリア
 
第64回カンヌ国際映画祭
女優賞受賞
監督自らのうつ病を患った体験を投影した、圧倒的な映像美の異色SFストーリー
豪華な邸宅で盛大な結婚パーティを開くジャスティンは、皆から祝福されながらもどこかでむなしさを感じていた。そんなとき、巨大な惑星が地球に向けて接近、世界滅亡の時が近づくが、彼女の心はなぜか軽やかになっていく…。
キャスト:キルステン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、アレキサンダー・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ジョン・ハート、キーファー・サザーランド/原題: MELANCHOLIA/2011年/135分/デンマークほか/英語
ニンフォマニアック Vol. 1
【ディレクターズ・カット完全版】
第64回ベルリン国際映画祭
アウト・オブ・コンペティション部門出品
女性のセクシュアリティを探求する、映画史上稀にみるセンセーショナルな大長編
ある冬の夕暮れ、年配の独身男セリグマンは、怪我をして倒れていた女性ジョーを自宅に連れて介抱する。回復したジョーは幼い頃から抱いている性への強い関心と、数えきれない男たちと交わってきた数奇な物語を語り始める。
キャスト:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ユマ・サーマン/原題: Nymphomaniac: Vol.1/2013年/147分/デンマークほか/英語
R-18+ 相当 18才未満の方はご観賞いただけません
ニンフォマニアック Vol. 2
【ディレクターズ・カット完全版】
第71回ヴェネチア国際映画祭
アウト・オブ・コンペティション部門出品
色情狂のヒロインが告白する、想像を絶するセックス遍歴… 流転の人生の行き着く果てとは?
怪我し倒れているところを助けてくれたセリグマンに、次々と性体験を重ねた自らの半生を赤裸々に語るジョー。いつしか不感症となった彼女は、快感を取り戻そうと試行錯誤を繰り返すが……
キャスト:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、ジェイミー・ベル、ウィレム・デフォー、ミア・ゴス/原題: Nymphomaniac: Vol.2/2013年/177分/デンマークほか/英語
R-18+ 相当 18才未満の方はご観賞いただけません