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レトロスペクティブ
INTRODUCTION
今やデンマークだけでなく、北欧を代表する巨匠となったラース・フォン・トリアー。カンヌでのパルムドール受賞など、輝かしい受賞歴を誇る一方で、観る者を挑発する作風で常に物議を醸してきたことでも有名だ。そんなラース・フォン・トリアー監督のフィルモグラフィの中でも、特異な存在となっているのが90年代に制作されたドラマシリーズ「キングダム」である。デンマークの架空の病院を舞台に、善良と思いきや狂気を感じさせる登場人物、荒唐無稽なのになぜか惹きつけられるエピソードの数々を交えて展開する同作は、デンマーク本国で最高視聴率50%越えを記録、社会現象を巻き起こした。ここ日本でも5時間弱の劇場用映画として2本にまとめられて公開され大ヒットとなった。その後も、“ホラーの帝王”スティーヴン・キングが作品に惚れ込み、2004年にリメイク版「キングダム・ホスピタル」として米国で製作されるなど、デヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」などと並び、世界中に多くの熱狂的なファンを生んだ傑作ホラーシリーズとなった。しかし、主演俳優であったエルンスト・フーゴ・イエアゴーをはじめ出演者が複数亡くなったことを期に、第2シーズンで制作は中止、未完のままとなっていた。

ところが、2020年12月に突然、最終章である『キングダム エクソダス<脱出>』の制作が発表された。そして、2022年ついに完結することとなった。全話5時間以上を繋いだ「映画作品」として、ヴェネチア国際映画祭で異例のプレミア上映を皮切りに、トロント国際映画祭、ニューヨーク映画祭、釜山国際映画祭などでも上映された。オリジナルキャストも一部続投し、北欧を代表する豪華キャストが集結した。『キングダム Ⅱ』で父・ステラン・スカルスガルドが演じた役のオマージュを演じるアレクサンダー・スカルスガルドや、マッツ・ミケルセンの兄・ラース・ミケルセン、フォン・トリアー監督作品の常連でもあるウド・キアも参加。さらに、フォン・トリアーの盟友でもあるウィレム・デフォーもシークレットゲストとして出演している。
STORY
コペンハーゲンの巨大病院キングダム
夢遊病者のカレンは、助けを呼ぶ謎の声に導かれキングダムへと辿り着く。
数々の不可解な事件を解決するため、カレンは病院の用務係のブルザー、
心臓外科医のユディットと手を組むが、悪魔の力に反撃されてしまう。
一方、キングダムに赴任してきて間もないスウェーデン人医師の
ヘルマー・ジュニアは、亡くなった父スティグ・ヘルマーの
秘密を探り始めるが…。
COMMENT
善も悪もあることを心得よ
ラース・フォン・トリアー
非常に興奮する、一部の映画ファンにとって
『キングダム』は『トップガン』であり
本作は『トップガン マーヴェリック』に匹敵する。
     New York Magazine
フォン・トリアー作品で
最も告白的かつ暴露的だ!
     Roger Ebert.com
常軌を逸したキャラクターや設定に
彼の美学が貫かれている。
     Variety