そんなキム・ソンホと時に対峙し、時に伴走する俳優陣も見逃せない。
貴公子が追う貧しい青年マルコを演じるのは、新星カン・テジュ。オーディションで1980倍の競争を勝ち抜き本作に抜擢された彼は、フィリピンでボクサーをしているマルコを演じるべく撮影前からアスリートたちと共にトレーニングを積み、減量に取り組んで“本物のボクサーの身体”を手に入れた。さらに本作では絶望的な状況に放り込まれ、次から次に窮地に陥るマルコの混乱と恐怖をセリフに頼ることなく表情や演技の積み重ねで見事に体現。本作は韓国映画界の明日を担う才能の出現を確信できる1本でもある。
そんなマルコの行方を追う財閥の御曹司ハンを演じるのは、韓国映画界を代表する名優のひとりキム・ガンウ。冷血で執念深く、暴力への衝動に忠実なヴィラン的な側面を持ちながら、嫉妬や不安を隠しきれないハンの内面を鬼気迫る演技で表現する。
そしてコ・アラが物語の重要なポイントで顔を見せる謎の女ユンジュを演じる。これまで愛らしく、情熱的な役を演じることが多かった彼女は、本作で善とも悪とも言い切れない女性像を丁寧な表現を積み重ねてスクリーンに出現させた。彼女が現れる時、物語は大きく動き出す。本作で絶対に見逃すことのできない存在と言えるだろう。