2009年にギリシャで始まった欧州危機はイタリアにも拡大、ユーロ圏の深刻な不況はローマの大学研究者たちにも影響し、収入はカットされ、職を追われる者も続出。才能ある者たちは次々と海外に稼ぎを求め、研究者の海外転出は“国の頭脳流出”とも言われ、大きな社会問題にもなった。本作は、そうした学究の道に進めなかった研究者たちが、その才能を思いがけない方向で生かすという痛快な風刺コメディだ。
神経生物学者の主人公は、スマートドラッグを製造し、警察に逮捕されたが、獄中警察と取引し、警察の捜査に協力することになる。大学を追われた各分野の教授たちの中には、世界各国でテロ組織などに爆弾を売り込む者もいた。才能がありながらも、人生のチャンスや転機に巡り合わない不遇な研究者たちが再び結集。次々に予期せぬ事態が起こり、負け組たちの抱腹絶倒の追跡劇が展開する。
「首席の学者がゴミ収集員」という記事が、イタリアの新進気鋭の監督、シドニー・シビリアの目に留まったのが発端だった。高学歴で優秀な頭脳を持つ人たちが、能力に見合った職を得ることができず、社会の片隅に追いやられ、その頭脳を使って犯罪に手を染め復讐し始めたらどんなことになるのか?監督が、自身も映像分野でキャリアを積みながらアルバイトで生計をたてた経験を持つ一人として向き合ったテーマだ。
日本でも大学への助成金や、研究機関での研究開発予算の削減がニュースとして飛び交っていて、まるで人ごとではないテーマである。
不遇で鬱屈した高学歴エリートたちが必死に頑張る姿にはグイグイ感情移入させられ、年齢、性別、職業、国籍を超えて大興奮を覚える傑作コメディだ。