英雄の証明

4月1日(金) Bunkamura ル・シネマ、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国順次公開!

コメント Filmarks

INTRODUCTION

2度の米アカデミー賞受賞監督アスガー・ファルハディ。
社会に渦巻く歪んだ正義と不条理を、
現代に生きる私たちに突きつけてくる
極上のヒューマン・サスペンス。

 2011年の『別離』でベルリン国際映画祭にて3冠に輝き、2016年の『セールスマン』ではカンヌ国際映画祭の男優賞、脚本賞をダブル受賞。この2作品で米アカデミー賞外国語映画賞も制したアスガー・ファルハディ監督は、今や誰もが認める世界的な巨匠である。母国イランとヨーロッパを股にかけて活躍するファルハディ監督は、人間と社会の本質に鋭く切り込む傑作を世に送り出してきたが、緻密な脚本や演出力に裏打ちされたその作風は、このうえなく濃密なサスペンスの要素をはらんでいる。ごく穏やかな日常の中に生じた小さなひび割れのような出来事が、登場人物の人生を根底から揺るがす事態に発展していく様を、張り詰めた緊張感を持ちつつ情感豊かに描出。その比類なきストーリーテリングの妙技が世界中の観客を魅了してきた。

 ファルハディ監督の長編第9作『英雄の証明』は、数多くの古代遺跡が現存する南西部の古都シラーズを舞台に、借金苦にあえぐ男に突然舞い込んだ苦境打開のチャンスを描くサスペンスフルな物語。手にした金貨は、幸運な奇跡か、それとも神が与えた試練なのか。主人公の何気ない“選択”が思いもよらない社会現象を起こし、父親を信じる無垢な子供をも残酷に巻き込んだ大事件を招き寄せてしまう予測不可能なストーリー展開からひとときも目が離せない。
 第74回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、2021年度の米アカデミー賞国際長編映画賞・ショートリストにも選定されている本作は、まぎれもなくファルハディ監督の新たな代表作となるだろう。

STORY

大きな正義感と小さな嘘。
「賞賛」と「疑惑」が交錯するソーシャルメディアの光と闇。
汚された名誉、狂わされた人生の行方は-

 元看板職人のラヒムは借金を返せなかった罪で投獄されている服役囚だ。そんな彼の婚約者が、偶然にも17枚の金貨が入ったバッグを拾う。それは将来を誓い合った恋人たちにとって、まさしく神からの贈り物のように思えた。借金を返済さえすれば、その日にでも出所できるラヒムは、金貨を元手にして訴訟を取り下げてもらおうと奔走するも示談交渉は失敗。いつしか罪悪感を持ち始め、金貨を落とし主に返すことを決意する。するとそのささやかな善行は、メディアに報じられ大反響を呼び“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく。吃音症の幼い息子もそんな父の姿を誇らしく感じていた。借金返済のための寄付金が殺到し、出所後の就職先も斡旋されたラヒムは、未来への希望に胸をふくらませる。ところがSNSを介して広まったある噂をきっかけに状況は一変し、周囲の狂騒に翻弄され、汚された名誉を挽回するためラヒムは悪意のない嘘をついてしまう……。

 “英雄”ラヒムをめぐって、彼の行いを褒め称える者、利用しようとする者、疑惑の眼差しを向ける者たちの思惑が絡み合う本作は、人間の倫理観を問うサスペンス劇である。ファルハディ監督はそうした普遍的なテーマを追求するにあたって、いまや世界中で絶大となったSNSやメディアの影響力に着目。英雄として持ち上げられ、一方で詐欺師と呼ばれるラヒムのとてつもなく振れ幅の大きな運命を通して、真実というものの曖昧さや、社会に潜む欲望とエゴを現代的な切り口であぶり出す。

CAST

STAFF

監督・製作・脚本

アスガー・ファルハディ

1972年、イラン・ホメイニーシャフル生まれ。十代前半の頃に青少年映画協会で映画作りに親しむ。テヘラン大学で演劇を学んだのち、タルビヤテ・モダレッス大学で舞台演出の修士号を取得した。その後、TVシリーズの監督を務め、『フライト・パニック ~ペルシア湾上空強行脱出~』(02・未)に共同脚本で携わった。『砂塵にさまよう』(03・未)で長編映画監督デビューし、モスクワ国際映画祭で俳優賞を、アジア太平洋映画祭で脚本賞、監督賞、助演俳優賞などを受賞した。『美しい都市』(04・未)、『火祭り』(06・未)を経て、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞した『彼女が消えた浜辺』(09)が初めて日本で公開された。続く『別離』(11)は、離婚しようとしている夫婦を中心としたスリリングな家族ドラマ。同作品でベルリン国際映画祭にて金熊賞(作品賞)と二つの銀熊賞(男優賞・女優賞)を受賞、米アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞など90以上の数多くの賞に輝き、国際的な名声を一躍高めた。フランスで撮影を行った『ある過去の行方』(13)はベレニス・ベジョにカンヌ国際映画祭女優賞をもたらし、ゴールデングローブ賞とセザール賞にもノミネートされた。『セールスマン』(16)ではカンヌ国際映画祭脚本賞と男優賞、2度目となる米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルスというスター俳優たちと組んだ『誰もがそれを知っている』(18)は、少女誘拐事件が起こった村の愛憎渦巻く人間模様を描き上げたサスペンス映画で、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門のオープニングに選ばれ、スペインのゴヤ賞で8部門にノミネートされた。

製作

アレクサンドル・マレ=ギィ

アスガー・ファルハディ監督の『ある過去の行方』(13)、『セールスマン』(16)、『誰もがそれを知っている』(18)の製作を務めたプロデューサー。そのほかに製作を手がけた主な作品にはヨアキム・トリアー監督の『母の残像』(15)がある。

編集

ハイデー・サフィヤリ

イランの映画編集者として25年のキャリアを重ね、同国のファジル映画祭で最優秀編集賞を4度受賞した実績を持つ。アスガー・ファルハディ監督との長い共同作業で知られ、『火祭り』(06・未)『彼女が消えた浜辺』(09)、『別離』(11)、『セールスマン』(16)の編集を担当。『誰もがそれを知っている』(18)ではゴヤ賞の編集賞にノミネートされた。

COMMENTS

ジョージ・ミラー監督映画監督『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

『英雄の証明』は徹底して重層的だ。作品の世界に没頭してしまう素晴らしい映画体験
登場人物と一緒にいるかのように感じるほど自然に、彼らの個人的な話が普遍的な物語になっていく。世界中どこにいても、この作品で起こる問題を理解できない人はいないだろう。

ギレルモ・デル・トロ監督映画監督『シェイプ・オブ・ウォーター』

主演アミル・ジャディディの演技は、驚くほど真に迫っている

ルカ・グァダニーノ監督映画監督『君の名前で僕を呼んで』

信じられないほど優れた脚本だ。監督が生み出す複雑な登場人物やシチュエーションは「創作の奇跡」といえるだろう。アスガー・ファルハディ監督の作品は、我々の時代のマスターピースだ

マイク・リー監督映画監督『秘密と嘘』

アスガー・ファルハディ監督は人々が経験することを、深い優しさを持って取り扱う。現実世界にいるような人間を、リアリティを持ってスクリーンに映し出すことができる類まれなる能力を持っている。

西川美和映画監督

嫌な予感がする。
金貨を拾った主人公は、思うようにそれを利用できない。しかしそのおかげで取り巻く世界が明るくなっていく——それがすでに、猛烈に恐ろしい。やめとけ。ファルハディの前でその展開はマズい。ろくな目に遭わない!!
終わってみたら、汗びっしょり。イラン固有の背景を舞台にしながら、人間の本質の描写には、世界とミリ単位のズレも感じさせず、ソーシャルメディアに絡め取られる現代の狂騒を容赦無く盛り込んで行く。綿密なストーリーテリングと、最小にして誰にでも伝わる演出。世界のレベルはこれほど自分と違うのかという意味でも、心臓が疲弊します

入江悠映画監督

現代社会の危うい橋をふらふらと渡りつづける主人公。彼がもっと大事にしたかったものが、クライマックスで見えた時、感動で震えた

武田砂鉄ライター

私たちは今、評価が一気にひっくり返る社会を生きている
この映画に映る、ほぼ全員が困惑している。喜怒哀楽のそれぞれに戸惑いが滲んでいる。 でも、それが、今、この時代を生きる上での前提になっている。

赤川次郎作家

これは「完全な人間はいない」という単純な真実の物語である。小さな善行、小さな愚行を、SNSがその人のすべてとして色分けしてしまう。同じことをしていないかと自分に問いかける、秀作。

小島秀夫ゲームクリエイター

ミニマムな日常と、独自の慣習を描き、世界を共感させて来たアスガー・ファルハディ。国際映画人として羽ばたいた彼が原点回帰し、『別離』を凌ぐ才能の“証明”を本作で魅せた!個人が意図せぬうちに“英雄”は量産され、消費され、瞬く間に葬られる。世界の何処にいようとSNSからは逃れられない現代人こそは、ラストでしばらく席を立てないはずだ

久米宏フリーアナウンサー

村上春樹原作の映画では 北欧製の赤いクルマが走っている
このイラン映画では 主人公はMAZDAに乗っている
しばらく観ていると イランなのか日本なのか分からなくなる
そっくりなのだ

佐々木俊尚作家・ジャーナリスト

誰かを吊し上げ、弾劾し、職を奪う行為は日本のSNSでも蔓延している。そういう行為を当然だと思っている人たちにこそ本作を観てほしい。それは人生に取り返しのつかない事態を招くことを。

堀潤ジャーナリスト

今、戦争の真っ只中にある。視界に飛び込む「善と悪」との衝突が世界をさらに分断に追い込む。しかし、私は本当に考えているだろうか。知ろうとしているだろうか。みているだけでは翻弄される。みているだけでは私たちも加害者になる。責任を持つのだ。そのために、この映画は今こそ必要だ

伊藤詩織ジャーナリスト

名誉なんて誰かが勝手に与えるラベルでしかない。自分自身に真実に生きる、それが彼の選んだ道なのだ。自分自身に名誉を送るために。

北村道子スタイリスト

アスガー・ファルハディの脚本は今のメディアの有り様を警告しているリアルな現実である。

三浦瑠麗国際政治学者

ファルハディ監督の人間に対するアプローチは信頼がおける。
『セールスマン』はわたしにとって心にくい込んで忘れられない作品だったが、
これも忘れられなくなりそうだ。
何度も見返すだろう

宇野維正映画ジャーナリスト

他者からの評価が貨幣となる時代の危うさについての巧みなストーリーテリング。
扉と窓の描写にこだわりぬく「映像の魔術師」としての芸術性
アスガー・ファルハディはまたしても現代最高の映画作家の一人であることを証明した。

駒井尚文映画.com編集長

2度のオスカーに輝くイランの名匠アスガー・ファルハディの、見る者の心をじりじりと焦がす傑作
悪意のない嘘、テレビ局に強要された演出、SNSでの炎上と風評被害など、主人公に降りかかる出来事は日本で今私たちが見たり聞いたりしていることと何ら変わりません。
テレビ画面やスマホの画面をほとんど映さずに、この物語を簡潔に語ってみせるファルハディ監督の演出に痺れました

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