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殺処分寸前で保護した愛犬のトッド。
その鳴き声が原因で大都会ロサンゼルスのアパートを追い出されたジョンとモリー。料理家の妻は、本当に体にいい食べ物を育てるため、夫婦で郊外へと移り住むことを決心する。しかし、そこに広がっていたのは200エーカー(東京ドーム約17個分)もの荒れ果てた農地だった―。
時に、大自然の厳しさに翻弄されながらも、そのメッセージに耳を傾け、命のサイクルを学び、愛しい動物や植物たちと未来への希望に満ちた究極に美しい農場を創りあげていく―。自然を愛する夫婦が夢を追う8年間の奮闘を描いた感動の軌跡。
映画制作者、テレビ番組の監督・カメラマンとして25年の経歴を持つ。アニマルプラネットとITVの野生生物番組の制作者として世界中を旅したことがきっかけで、複雑な生態系の相互作用に興味を持つようになった。そして2010年、チェスターは妻と共にアプリコット・レーン・ファームというバイオダイナミックで再生型の農場を始めた。本作にも出演している豚のエマや牛のマギーたちを撮影し、米オプラ・ウィンフリー・ネットワーク「スーパーソウル・サンデー」用に制作した短編(「Saving Emma(原題)」2015、「Worry For Maggie(原題)」2016、「The Orphan(原題)」2017など)で監督賞、脚本賞、撮影賞など見事5つのエミー賞を受賞。また、伝説のロック写真家、ロバート・ナイトのドキュメンタリー映画『Rock Prophecies(原題)』の監督を務め、ダラス国際映画祭、ナッシュビル国際映画祭、ロードアイランド国際映画祭の長編ドキュメンタリー映画部門で3つの観客賞を受賞してしいる。
主に世界の環境問題と社会問題に焦点を当てたドキュメンタリーの製作者。近年では、長編ドキュメンタリー映画『Eating Animals(原題)』の製作を、ナタリー・ポートマンらと共同で務めた。他にも共同製作を務めた作品は、ドキュメンタリー映画『ジェネレーション・ウェルス』(2018年サンダンス映画祭出品)、2012年のサンダンス映画祭 短編ドキュメンタリー映画部門で観客賞を受賞した『The Debutante Hunters(原題)』、『Misconception(原題)』(2014年トライベッカ映画祭ベストドキュメンタリー賞ノミネート)などがある。同作はアカデミー賞受賞監督のジェシカ・ユー、製作者のエリス・パールスタインと2度目のタッグを組んだ作品である。
地球温暖化からアメリカ人の砂糖の過剰摂取まで、あらゆる重要な環境問題や食に関する問題に10年超に渡り取り組んでいる。アカデミー賞受賞作品『不都合な真実』で製作を務め、『Fed Up(原題)』で製作総指揮を務めた。数多くの賞や栄誉を受けており、その中には全米製作者組合賞(PGA)のスタンリー・クレイマー賞、ヒューマニタス賞の特別賞、グレイシー・アレン賞などがある。また、全米オーデュボン協会のレイチェル・カーソン賞、フェミニスト・マジョリティ財団のエレノア・ルーズベルト賞、自然資源防衛協議会(NRDC)のForces for Nature賞を受賞した。2006年、ファッション誌『グラマー』主催のウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、『ニューヨーク・タイムズ』など多数のメディアで特集された。
アメリカのテレビドラマ・シリーズにおける一流のショーランナー、製作総指揮、脚本家、クリエーターであり、この業界で20年以上の経歴を持つ。製作総指揮とショーランナーを務めて9年目になる『クリミナル・マインド』では、最初のシーズンが放送された2005年9月から最長で脚本を書き続けている。『エイリアス』、『The OC』、『チャームド~魔女3姉妹』の脚本家としてキャリアを積み、『クリミナル・マインド』を担当することになった。
ドキュメンタリーの映画製作者で、脚本や製作において豊富な経歴を持つ。アトランタでCNNの『ヘッドラインニュース』と『ニュースナイト』の作家としてキャリアをスタートさせ、90年代後半にロサンゼルスに移住、200時間以上の伝記スタイルのテレビ番組の製作を務めた。携わった劇場公開作品には、アカデミー賞受賞の『イカロス』と『ザ・コーヴ』、アカデミー賞ノミネートの『Chasing Ice(原題)』と『Racing Extinction(原題)』、グラミー賞受賞の『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK –The Touring Years』、レオナルド・ディカプリオの『地球が壊れる前に』、『The Game Changers(原題)』、『The Devil We Know(原題)』などがある。
Q:農業を始めることと、さらにその経験を長編ドキュメンタリー映画にすることはまったく別物です。本作を製作したいと思ったきっかけは何ですか?
農場を始めて数年間は、土地を耕し、土壌を作りなおして自然と共存するという私たちの計画がうまくいくのか不安でした。だから他の誰かが鵜呑みにして、このような生態系との連携が可能だと誤解してしまってはいけないと考えていました。しかし5年が経った頃に、ある変化が起こりました。野生生物や様々な昆虫が帰ってきて、悩みの種だった害虫の侵入を減らすのを助けてくれたのです。私がインスピレーションを得たのは、通常雑草とされる植物など、私たちが問題視していたものが、実は土に還ることで果樹の重要な栄養素になっていたことに気づき始めた時でした。農場は私たちが始めたことを受けて、複雑な免疫システムを自ら再構築していたのです。常に記録は残していましたが、本気で映画化しようと考えたのはその年以降でした。映画を製作しようと決めた日のことは今でも覚えています。私は果樹園を歩いていて、ほんの数日前までアブラムシに覆われていた木の横を通りかかりました。アブラムシは植物の汁を吸い、それを枯らしてしまいます。しかしその木にアブラムシはもういませんでした。代わりに、何百匹ものテントウムシ、つまりアブラムシの天敵が集まっていました。私たちが農場をテントウムシにとって暮らしやすい環境に整えていたので、戻ってきてくれたのです。それから次々に同様のことが起こったので、この物語を映画化できると思いました。
Q:あらかじめ展開が決まっているのではなく、撮影と共にリアルタイムで内容が作られていった作品だと思います。その中であなたが経験した最も驚いたことや予期せぬ出来事は何でしたか?
非常に多くの野生生物が帰ってきて、農場のニーズとうまくかみ合って溶け込んでいく様子を観察できたことです。とても刺激的な経験でした。
Q:作品を観て分かるのは、農家になるなら、すべてを注意深く観察し、その密接な結び付きに目を向けて理解することが必要不可欠だということです。この教訓は、あなたが学んだ最も大きな教訓の1つかと思いますが、農業以外の暮らし全般でも役立ったでしょうか?
アルベルト・アインシュタインは、妻を亡くした友人への手紙で「自然を深く観察しなさい。そうすれば、すべてのものをもっと理解できるでしょう」と書きました。人間という存在の背後に広がる謎、私たちが自然の複雑さから感じる無限の可能性は、私たちの生き方だけではなく、あらゆる障害の乗り越え方を教えてくれる例えになっています。つまり、自然の階層システムを理解すれば、それで十分なのです。そこまでは、正しいか間違っているかではなく、因果関係という強力な法則ですべてが決まります。その結果が私たちに絶えず跳ね返ってきているのではないでしょうか。だからこそ私たちはどのように適応し、どの程度の管理が可能なのかを理解しなければいけない状況に身を置くようにしています。
Q:現在、世界中の農家たちが気候変動に対処しています。気候変動による変化は今や目に見える形で現実となっていますが、ご自身では日常的にどのように対処していますか?
私たちは、パッチワークの1パーツとして、例を示せればと思っています。私たちの農地再生の手法がいいインパクトを与えて、他の農家たちが同じようにすれば、畑はキルトのように広がっていくでしょう。当然ながら私たちを含めて1つの農場だけでは、気候危機を乗り越えることはできません。それぞれが生態系のために役割を果たすことが、問題解決のための道だと思います。もちろん、すべてが農業の責任ではないはずなので、私たちが解決できるのはあくまで一部です。ただ、農業は大きな影響を与えています。特に土壌の劣化や、作物の出来を妨げると恐れて“雑草”やその他の草を殺すリン酸系薬剤を使用することは大きな問題です。これらの植物を通して土壌は大気から炭素を取り込み、養分を生み出して微生物を育み、生と死の循環を行っているからです。
Q:これから観る人に望むことは何ですか?
若い世代の人にもこの映画を観てほしいです。楽しい場面ばかりではありませんが、若者へのメッセージも込めて作りました。観客の皆さんに、自然との共生が無限の可能性を与えてくれるということが伝わればと願っています。こうした自然の能力は、数十億年に及ぶ進化の過程で完璧に磨き上げられてきました。そして、どんな時も私たちのために機能しています。それに気づけなかったのは、私たちが他のことに気を取られすぎていたからかもしれません。また、本作が農業の1つのやり方を推奨したり、これが唯一の道だと押し付けたりするものだと受け取られるのは不本意です。むしろ、自然は私たちに多くの答えを教えてくれるということを信じてもらえるきっかけになればと心から願っています。その答えは一度には出てこないでしょう。土壌の劣化や砂漠化に関しては、長い時間をかけてここまで進行したことなので、抜け出すのもきっと時間がかかるはずです。すべての問題を解決するには、世代を超えて取り組む必要があります。しかし、子供たちが地球の持つ自然の免疫システムを脅さない道を進んでいけるように、今の世代がその基盤として正常に機能する土壌を残さなければなりません。困るのは地球ではないのです。ただ、人間にとって地球が住みやすい場所ではなくなるに過ぎません。もし地球が人間を問題だと見なせばなおさらです。だからこそ、私たちは地球の免疫システムでどちら側の役割を担うのかということを決める必要があります。この質問に対する私たちの答えが、きっと重要になるでしょう。
Q:農場を作るという挑戦を映画にしたいと思ったきっかけは何ですか?
正直、映画に関しては私はただの共演者です。私が興味を引かれたのは農場を作ること自体のほうでしたから。ジョンと私はどちらも強いクリエイティブ精神の持ち主であり、お互いの創造力を認め合っています。私たちの活動の記録を撮っていたのは、映画製作者であるジョンです。私は彼を作家として信頼しているので、映画の製作にも賛成したというだけです。彼の作品はどれも素晴らしいので、世界中の人に観てほしいと思っています。農場の観点からも、映画の製作には意味があると思いました。それは、私たちの農業のやり方は一般的に知られているものとは異なり、型にとらわれていないからです。1つのやり方にこだわらず、再生型の農業がより一般的な手法として受け入れられることを望んでいます。
Q:農場で過ごす時間の中で、あなたが経験した最も有意義なことは何ですか?
私にはこういう農場にしたいという極めて明確なイメージがありました。それが自分の中でさらに発展し、深まっていくという経験はとてもワクワクするものでした。農場では、自然や環境と密接に関わり合うことになるため、あまりに深く入り込んでしまって辛いこともあります。しかし、その辛さは必ずしも農業が重労働だからというだけではありません。もちろん大変ではありますが、自然と共生していると思いがけない出来事が頻繁に起こるのです。生き物を扱う仕事は、限りなく本質的で生々しい経験を伴います。それが私の魂を目覚めさせ、欠けていたことにも気づいていなかった自然とのつながりを与えてくれたと感じています。私の夢は現実となり、そして仲間たちの協力を得て想像以上に大きく成長しました。これは本当に素晴らしいです。正直、今の農場は私の夢をはるかに超えてしまっていて、圧倒されるばかりです。
Q:あなたが農場の土地から学んだ最大の教訓は何ですか?
支配しようとしても無駄だということと、重要なのは何かを根絶やしにしたり、屈服させたりすることではなく、他者との協力や理解だということです。あるものがどんな役割を持ち、それをどのように生かせるのかを常に考えると、他のすべてのことにかかる負担が軽くなり、物事のバランスが良くなるのです。そのためにはよく観察し、アンテナを張っておくことが大切です。常に問題は尽きませんが、それは実のところ“問題”ではなく、大地が私たちに何が必要なのかを教えてくれているだけなのです。つまり、自然とよりうまく共生するための次のステップなのです。
Q:これから観る人に望むことは何ですか?
世界中の人たちが作品を愛してくれればと思っています。これを観て、地球は美しくて不思議な場所だということを思い出してほしいです。そして、かけがえのないものを慈しみたいという気持ちになってもらえたら幸いです。
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